Chez Marie

僕たちの住む街

僕たちの住む街にも、ついに雪が降ってきた。

僕はダニエル。
ペットのカメレオンのロッキーを連れて、この街で郵便配達をしている。
僕には小さい頃から、この街を旅立って世界中を旅して生きてみたいという夢があった。

小さい頃から大好きなシェリーとは離れ離れになっちゃうけれど、
僕は自分の夢を叶えてみたい。

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この前、僕はシェリーにこう伝えたんだ。

「僕は小さい頃からこの街をずっと出たことがなかったから、いつかこの街を出て、自分の目で色んな物事を見ながら生きて行きたいと思っていたんだ。」

すると、シェリーは笑ってこう言ってくれた。

「ダニエル、とっても素敵な夢ね!夢があるって、とっても素敵な事よ。
もし世界中旅して、見た事のない景色だったり、感動した事があったら、私にも教えて欲しいな。」

シェリーが喜んでくれて、僕はとっても嬉しかった。

そして今日、僕はこれから汽車に乗って、この街を出て遠くの街へ旅立つ。
シェリーはお見送りに来てくれた。

あともう少しで汽車は出発する。僕は汽車に乗った。
席に着いて、僕は窓からシェリーに話しかけた。
「シェリー。僕、この街に生まれて良かった。本当にありがとう。」

他にも伝えたいことが沢山あったのに、僕はそれ以上何も話せなかった。
大きな汽笛が鳴った後、少しずつ汽車は動き始め、街を離れていった。

シェリーは最後まで笑顔だった。

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私はシェリー。愛犬のテナーと、大好きなこの街に住んでいるの。
小さい頃からダニエルとはとっても仲良し。

この前、ダニエルは私に笑顔で夢を教えてくれた。
ダニエルの目はとってもキラキラしていたわ。
でも、私も嬉しいはずなのに、何故かどこか切なくなったの。

そして今日、ダニエルは夢を叶えるために、この街から旅立っていった。
私は、あの時涙を流さないよう必死だった。
汽車はゆっくりと動いて、この街を去っていった。
伝えたい事が沢山あったのに、私は何一つ話せなかったの。

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その日、私は不思議な夢を見た。
赤い傘をさした女の子と、二足歩行のクロねこ。

彼女は私にこう話しかけてきた。
「テナー。テナーっていうのね?テナーがあなたにこう言っているの。
星に願ってみてって。きっとすぐに叶うよって。
僕は君をずっと隣で見てきたからって。」

それは不思議な夢だった。どうして彼女は、テナーの名前を知っているの?

その日、私に一通のお手紙が届いた。
ダニエルからのお手紙だった。

「やぁ、シェリー!元気にしてる?
今僕は、とても大きな街へ来ているんだ!」

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僕はそうシェリーにお手紙を書いた。
この前とても不思議な夢を見たから。

その夢には、赤い傘をさした女の子と、二足歩行のクロねこがでてきた。

彼女は僕にこう話しかけてきた。
「ロッキー。そう、ロッキーっていうのね!彼がこう言っているわ。
シェリーにきちんと思いを伝えてあげてって。僕は君を、ずっと隣で見てきたからって。」
「シェリーを知っているの?」
「ロッキーが教えてくれたの。僕はいつと君と一緒に居たからわかるんだって。
最後に言えなかった事があるだろうって。」
「君はロッキーと話せるの?」
「ロッキーが私に会いに来てくれたの。願いが叶う、星の降る海って知ってる?
そこにテナーも来ていたのよ。テナーがロッキーに伝えてくれたみたい。そしてロッキーがあなたに伝えてるの。
今度はあなたがシェリーに伝えなくちゃ!」
「テナーのことを知っているの?」

彼女はにっこりと微笑んで、夢はそこで終わってしまった。
とても不思議な夢だった。
テナーとロッキーが、なんでも星の降る海で出会ってたみたいだ。

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僕はシェリーにずっと伝えられなかった事がある。
ずいぶんと長い間一緒に居たはずなのに、大切なことは1度も伝えていなかったかもしれない。

「ロッキー、君はずっと僕のこと見ててくれたんだね。」
ロッキーはにっこりとダニエルを見つめた。
「明日、お手紙を出してみるよ。
いつかあの街に帰る時に、きちんと伝えられるといいな。」

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届いたお手紙からは、ダニエルの優しが伝わってきた。
お手紙が届く度に、私はとても嬉しくなった。

「また来月も届くと嬉しいな。」
私はそう星に願った。

ダニエルから届く手紙には、
私の心をワクワクさせてくれる、魔法があるの。

そして今日は、もう一つ。
「いつかダニエルがこの街に帰ってきたら、
きちんと伝えたかった事を伝えられますように。」
って、そうお願い事をしてみたの。

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僕たちには、生まれつき与えられた場所がある。
その街に住むのも、その街を出ていくのも、
それは僕たちの自由。
僕たちにはそれぞれの夢があって、それは時には違うものかもしれない。

でも、夢は一つじゃなくてもいい。
大きさも沢山あっていい。
もし思いと思いがピッタリと重なったなら、
それはたとえどんなに離れていても空間を超えていく。

悩んでいることは複雑で難しそうに見えて、実はとってもシンプルで簡単な事だったりするんだ。

今日もまた流れ星が1つ、星の降る海に現れたとさ。